ジョン・フォード『捜索者』 56年製作 リヴァイヴァル
10代なかばのこの年頃の嗜好なんて単純なもので、派手なガンファイト・戦闘シーンがテンコ盛りになっていれば満足していた。
ところが『捜索者』にはその両方がない。
ジョン・ウェインの役柄は『赤い河』にも増して陰惨きわまる復讐鬼なのだ。
He had to find her.
「インディアン」にさらわれた妹(ナタリー・ウッド)を捜し求め、復讐を果たす。
これだけの物語だ。
ちょうど『許されざる者』と合わせ鏡になるようなストーリー。
それもそのはず、原作者は同じアラン・ルメイだった。
「インディアン」と表記するのは、べつに、「政治的に公正な言葉遣い」を無視するわけではない。
開拓者の絶対正義と野蛮の悪を対置することで成り立つ一時期の西部劇を語るのに、先住民という言葉ではズレが生じるからだ。
現にこの映画のクライマックスには、復讐者が「インディアン」を襲撃して、頭の皮を剥
いでしまう、というショッキングなシーンが置かれている。
これが人間の条件をめぐるアーキタイパルな(アメリカに特有の、と注釈をつけたほうがいいか)物語だと気づくのはずっと後年のこと。
不思議なことに、すると、いくつかのシーンがまるで大切な額縁に入れられていた追憶のように、くっきりとよみがえってくるのだった。
数十年も意識の古井戸の底に眠っている映画力にあらためて感歎した。