ヘンリー・ハサウェイ『ネバダ・スミス』
観ているほうの都合でいえば、スティーヴ・マックイーンのワンマン映画なんだが、助演陣の層の厚さも凄い。
ブライアン・キースのガンマンに特訓を受ける前半は文句なし。
一人、二人と仇討ちをやってのけるところまでは快調だった。
ここまでなら、何回観ても素晴らしい。
後半になって復讐者の内面にもくもくと迷いが生じてくると……。
なんとも歯がゆい展開に苛々しどおしだった。
ストレートな復讐劇でまとめあげればと望むのは野次馬根性か。
すでにそうした傾向は「過去」のものになっていたということか。
考えてみればマックイーン西部劇の後期は、だいたいこんな余分の注釈で統一感の薄い話になっていたみたいだ。
晩年の『トム・ホーン』がいい例で、脱力する話が終わった後のスクリーンに「これは実話である」なんて但し書き出てくる。
アンチ・カタルシスが後あとまで尾を引く。
10年くらい前、『拳銃無宿』のフルカラー版DVDが発売になった。
オリジナルのモノクロを加工した着色版だ。
シリーズの最終回が忘れられない。
護送した女の囚人とのあいだに芽生える恋。賞金稼ぎの足を洗って新たにやり直そうと二人は約束する。
けれども待っているのは女の死だった。
ジョッシュの、魂を抜かれたような表情がいつまでも心に残った。
マックイーンのベストはやっぱり『拳銃無宿』
二は『荒野の七人』
三のセレクトに迷う。『シンシナティ・キッド』か『ジュニア・ボナー』か『ゲッタ・ウェイ』か……。
純然たる西部劇といえないものばかり。
仕方がない。『ネバダ・スミス』の前半のみを三位に。